オーディオ環境改善(3) ラインケーブル

 つぎはラインケーブルをまとめます。用途で呼び方が分けられていてマイクレベル、 ラインレベル 、スピーカーレベルの信号を扱うのがそれぞれマイクケーブル、ラインケーブル、スピーカーケーブルになります。それぞれ基本構造は同じなので同じケーブルをマイクケーブルに使ったり、ラインケーブルに使ったり出来ますが、スピーカーケーブルは大電流が流れるので マイクケーブル用を使うと火事が怖かったりします。

 パワードスピーカーを使用しているのでスピーカーケーブルは使用しません(ちなみにスピーカーケーブルはあまり差が出ないそうです)。ラインケーブルはブラインドテストをパスした程度にはっきりと差が出ました。後になるほどスピーカーから離れて効果も微妙になってくるので実質これがはっきり音への影響を確認出来た最後の要素になります。

プラグの選定とメッキの考え方

 ノイトリックのプラグがデファクトスタンダードのようなので、これを使用します。soundhouseが安いです。型番のMがオス、Fがメス、AGが銀メッキで他は金メッキです。

NC3MXX-B
NC3MXXBAG
NC3FXX-B
NC3FXX-BAG

 金メッキは低音寄りの暖かい音、銀メッキは明るい音になると言われており、この界隈で有名なプロケーブル曰く、金も銀も特徴があるのでどちらかだけを使用するとピーキーになるので半々になるように使用するのがよい、ただし積もり積もって影響がでるだけなのでで1つ2つの差では変わらないと主張しています。あまり気にする必要はなさそうです。実際実験した限りでは1つではめっきによる音の違いを感じられませんでした。電源がなければ信号が増幅されることはないはずなので金メッキの方はハイが落ちているのでしょう。

 金メッキはメッキが薄く、頻繁に抜き差しするには強度に不安があるそうですが、金なので劣化しません。銀は強度は十分ですが、さびはしなくとも地域によっては硫化してしまうのメンテナンスが必要になります。いずれにせよ年に一回ぐらいはミツワ ソルベント(溶解液)(ソルベルトは樹脂を溶かすそうなのでXLRコネクタに使うのは駄目っぽいです)とベビー綿棒で端子が掃除しましょう(掃除方法を上げました)。ちなみにカタログ上は両方とも抜き差し回数の保証値が1000回なので消耗品あつかいです。

230109 追記 異種金属による電蝕について
 今更気付きましたが、異種金属同士を接触させるとイオン化傾向の差で片方が酸化されます。常時接続するならば注意した方がよさそうです。間に媒介がないと反応は進まないようですが、日本のように湿度が高いと反応が進みやすいそうです。銀メッキは金メッキに酸化させられますし、ニッケルメッキは金メッキや銀メッキに酸化させられます。特にニッケルメッキと金メッキはイオン化傾向の差が大きいのでニッケル皮が黒ずんで酸化皮膜をつくり接触不良になることが多いそうです。

 調べたところ米軍が基準を示していまして、金と銀、銀とニッケルはセーフで金とニッケルは駄目とのことでした。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1954/9/12/9_12_27/_article/-char/ja/

 XLRに一般的に使用されているノイトリックの端子はニッケルメッキがなく、白なら銀メッキと考えてもよさそうですが、TRSフォンはニッケルメッキの場合が多いようです。肉眼では銀メッキとニッケルメッキを見分けられないので、機材側が白っぽければ銀メッキかニッケルメッキ使用した方がよさそうです。

半田選定

 半田付けに使う半田を選定します。半田も色々あるようで、この界隈闇ですね。鉛入りハンダの定番がKester44とKR-19RMAです。Kester44はギターでよく使用され楽器向け、KR-19RMAは癖がなく汎用的に使えるそうです。鉛フリー半田もあり、これは鉛の使用が規制され始めているので代替品としてうまれたもので、溶けない、馴染まないと作業性が悪いです。温度調整できる半田ごて必須。鉛フリー半田は定番が定まっていないようですがSR4N-Cuが評判よいようです。

実験
belden 88760をkester44, KR-19RMA, SR4N-Cuで作成したケーブルでA/Fとスピーカーを繋げてそれぞれ比較してみます。

 kester44はとても特徴のある音です。ビートルズとかそういう時代の音がします。いい感じの荒さがあって、低域は物足りませんが、中域が前にでる感じです。楽器向けですね。いちおうKR-19RMAとブラインドテストをすると3回やって3回とも正解したので気のせいではなさそうです。
 KR-19RMAとSR4Ncuはブラインドテストをするまでもなく違いが分かりませんでした。Kester44が個性的すぎるのかもしれません。

 音に違いがないので作業性のよさからKR-19RMAをリファレンス半田とします。

ケーブル選定

 ちまたで評判のよい以下のケーブルを用意し、 A/Fとスピーカーを繋げて比較実験しました。

k3x0.2
TPS7182
peacock mk2
2549
2534
88760

88760
プロケーブル一押しの品です。比較対照ができて初めてクリスタルサウンドと呼ばれる由縁がわかりました。細いわけではないけれど低域すっきりで、高域がきれい。バイオリンとかが煌びやか。低域がすっきりしている分見渡しがよくて一番空間が広く感じます。空間の広さと低域は、トレードオフなのか。ただ、フラットと呼ばれているけれどこれはフラットなのだろうか?他のケーブルがハイ落ちしているのか、このケーブルのローが痩せているのかは不明です。 くっきりはっきりした音でオンリーワンだと思います。ちょっと低域が寂しいけど

2549
 88760からちょっとだけ低域が増えました。少しにじんでダイナミクスがせまくなったのか、のっぺりした印象です。
2534
 2549からさらに低域が増えて、ハイ落ちしたのか滲んだのか、くっきり感はうすれましたが、聴き疲れなく、リスニングに向いてそうな音です。ダイナミクスは2549より広い気がします。

k3x0.2
 一番お高いノイマンのケーブルです。 88760の高域を少しだけ落ち着かせて低域をぐんと増やした感じ。音が前にでてゴリゴリする。音の壁を一番感じるし、スピーカーからでたときの帯域ではこれが一番フラットなのではと思います。 最近soundhouseで販売を始めて半額になっています。

peacock mk2
 k3から音圧が減った感じです。お安くすませるならこれが無難だと思います。

TPS7182
 お店に広告が出ていて安いので買いました。といってもk3の半額程度でケーブルとしては十分高めですが、新時代のケーブルらしいです。k3よりほんの少しだけ明るくなって張りを感じる。太く芯がでて、音の壁間はやや薄れましたが、かなりいいと思います。スピーカーにも楽器にもよさそうです。


 一番好みなK3x0.2を採用しました。値段を考えないなら k3x0.2 or TPS7182 or 88760、安くするなら peacock mk2でしょう。TPS7182は、もっと日の目を見てもいいと思います。好みの差でノイマンのk3を採用しましたが、TPS7182も劣ってません。

結線方法

 結線方法は結構個人の流儀があってばらばらです。XLRケーブルの場合はピンの1番シグナルグランド、2番ホット、3番コールド、そして留め具の金具がシャーシグラウンドになり、これにそれぞれケーブルのどの部分を接続するかが問題になります。取りあえず、ケーブルにこだわりがありそうなヴェルトワイヤリングさん( https://www.weltwiring.com/ )のやり方を参考にします。

  1. 2芯の場合

 2本をホットとコールド、シールドをシグナルグランド に接続し、シャーシグラウンドは繋げません。これが最近の主流のようです。上記のサイトですと、グラウンドループを防ぐためといっていました。後述の3芯の場合との違いはシャーシとシグナルグランドが共通なのでシグナルグランドがループの通り道になってしまうところでしょうか。 ただし、マイクケーブルとしてつなぐ場合は1番ピンとシャーシグラウンドの留め具を結線するそうです。

2 3芯の場合

 自分が使っているK3x0.2がこのタイプです。3本それぞれを3つのピンに繋げ、シールドをシャーシの留め具に繋げられるので、それぞれ専用の回線が持てます。ただし自分の場合、オーディオインターフェースの入出力がメインの2ch以外シャーシとシグナルグランドの区別のないTRSなので、オーディオインターフェース側のTRSではシールドを浮かしてオーディオインターフェースに接続されている機材の側でシャーシグラウンドに接続しています。シールドは片側と繋げれば十分みたいですし、せっかく3芯を使っているのでシャーシとシグナルグランドは独立させておきたいです。ついでにグラウンドループ対策にもなりますし。このとき ノイズがシールド->シャーシ->アースの順に逃げるはずなので機材もアースに繋げておきましょう。

 マイクケーブルの場合は普通にそれぞれ独立して繋げばよいです。

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